No.1|これまでの頑張りを無駄にしない!野球観戦で最高のリフレッシュに出かけよう!

年齢による身体の問題や持病があると、今まで通りの生活や趣味、楽しみなどに諦めの気持ちが出てきてしまうものです。
しかし、好きなことを楽しめない不自由さは精神的なストレスとなります。

身体の不調や生活の制限があっても、心から好きなことを楽しんでほしい。
そんな想いから、『クラーチ・ファミリア船橋』では、ご入居者にある取り組みを用意しました。

1. 身体の不調と孤独から、不安定な毎日を過ごしていた

クラーチ・ファミリア船橋に入居中のI様は、現在70代、7年以上ホームで過ごしています。
左半身不全麻痺や様々な病気を抱え、また人との関係性が苦手なことから家族とも疎遠状態にありました。
寂しさと不安から、ホームのなかを行ったり来たりして気を紛らわすことも多かったそうです。

外出は理学療法士によるリハビリテーションとして、数時間外に出る程度。ホームとしても外出で気分転換を図るものの、レクリエーションや外出機会に限られることから、I様からの不満が募ることもありました。

「I様が楽しめるようなことを企画して、生活に張り合いを感じていただけたら」、そこでスタッフはある取り組みを思いつきました。

2. 大好きな読売ジャイアンツの野球観戦に

I様の毎日の楽しみは、テレビで野球中継を観ることです、読売ジャイアンツや大リーグの試合が大好きで、中継を観ながら感嘆の声をあげることもよくあるそう。
スタッフは、「野球観戦に出かけるという思い出の記録が残せたら、今後のストレス解消や生活へのモチベーションアップにつながるのではないか」と、読売ジャイアンツの野球観戦にI様をお連れすることを計画しました。

【①スタッフの熱意と計画で、夢の実現に】
I様が最後に野球場まで行ったのは20年前。「また行けたらいいね。岡本和真選手と坂本勇人選手が観たい」と語るものの、当初は本当に野球観戦のために外出するとは思っていない様子でした。

それでも、持病や誤嚥性肺炎の再発による遠出が難しくなりうること、現在なら野球観戦を楽しめる状態にあることから、「今が一番野球を楽しめるチャンス」と、スタッフは計画を進めました。
抽選や先着のためチケットが取りにくいこと、その場合にI様のショックが大きいことも踏まえ、チケットが取れるまではI様には秘密にすることに決めました。

【②いざ野球観戦へ、準備の道のり】
無事にチケットが取れ、いよいよI様にご報告。「夢のようだ」と、I様は涙を流して喜んでくれました。

2週間後の野球観戦に向けて、そこからはI様もスタッフも準備モードに入ります。I様は、スタッフの助けを借りながら応援グッズや手作りのチケットの作成、外出時の飲食代やチケット代のための節約。
「気持ちを上手にコントロールする」とスタッフと約束し、心を落ち着かせる努力もしていました。
ホーム側では、キーパーソンからの承諾や送迎の調整を行いました。移動から観戦まで6~7時間の外出と想定し、それだけの外出ができる心身状態か、医師とも連絡を重ねました。

入居してから、極きざみ食にまで食事形態が下がってしまった時期もあったI様。「好きなものを刻まずに、そのまま食べたい」と嚥下リハビリテーションに励むほどの努力家でもあり、ドキドキしながらも当日までの準備は順調でした。

3. 「圧倒された」野球観戦を目前に

来たる7月13日は、読売ジャイアンツと横浜DeNAベイスターズとの試合です。
I様は朝からワクワクとした状態で、ホーム内を歩きながらスタッフやご入居者に「おはよう」と明るく声を掛けていました。

東京ドームに着いてからは、グッズの購入や写真撮影、『ドーム飯』での食事など、野球ファンならではの楽しみを次々と満喫。
そうして迎えた巨人戦は、I様にとって「圧倒的」でした。
テレビで観ていた風景がその日は間近に迫り、非日常の経験ができたそうです。

【①その後の生活が前向きに】
夢の1日からの帰路では多少の疲れはありましたが、I様の心はしっかりと満たされていました。
帰宅してからも興奮冷めやらず、スタッフ一人ひとりに手書きでお礼のメッセージも書いてくださり、スタッフも嬉しかったそうです。
ホームでの過ごし方も変わり、スタッフを見かけると「いつもありがとう、悪いね」と、これまで以上に労いの言葉をかけてくれるようになりました。

4.「諦めない」気持ちで、生活に彩りを加えていきたい

今回の野球観戦の外出を振り返り、「行く前までは諦めていたけれど、諦めたらダメだな」とI様。
当初は無理だと思っていたことを実現できて、チャレンジ精神が芽生えてきたようです。

次の目標は、以前住んでいた地域を訪れることです。
色々と課題が残るものの、今回の野球観戦の経験を原動力に、その日がくるまで努力をしていくつもりです。
クラーチ・ファミリア船橋のスタッフも、I様が今後も明るく穏やかな毎日を過ごせるよう、できる限りのサポートを続けていきます。


ライター:加藤 小百合